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伊勢谷 暁

相続について知っておきたいこと 2回目

相続について知らないと困ること、損することなど、身近な問題にもかかわらず知っておきたいことが多くあります。


今回は先月の1回目に続いて2回目をお送りします。2回目としては、


1)相続税の配偶者控除

(国税庁No.4158 配偶者の税額の軽減


2)1次相続と2次相続、

について例をあげて分かり易く説明したいと思います。


1)遺言書で「俺が死んだら妻に全財産を譲る。」と書けば遺産1億6千万円まで相続税はかからない?

 

会社員のA夫さんが65歳で定年を迎えました。

 

A夫さんは【会社から退職金3,000万円】をもらい、それまで貯めた【預貯金2,000万円】と合わせると【金融資産は5,000万円】になります。

 

そして【年金としても夫婦合わせて年間360万円】ほど入る予定であることから老後の生活は心配ないと考えていました。

 

夫婦には2人の子どもがいますが、2人とも独立して所帯を持ち別に暮らしています。

 

ある日、A夫さんは友人から「相続税の配偶者税控除」の話を聞きました。

 

*相続税の配偶者控除(配偶者の税額の軽減)・・・

配偶者は相続した遺産のうち1億6千万円もしくは法定相続分である遺産額の1/2までなら相続税がかからない。

ただし、相続税の申告期限(通常10か月)までに必要な書類を添えて、遺産分割協議書と申告書を提出すること。

 

申告期限までに遺産分割ができなかった際には、「分割見込書」を提出して3年以内に遺産分割を行い申告する。

 

という制度です。

 

妻B子さん想いのA夫さんは、ふと自分が死んだ後のことが心配になりました。

 

「子2人は独立して何不自由なく生活しているので心配ないが、B子が生活するのにお金は足りるだろうか?」 自宅の相続税評価額は2,000万円です。

 

金融資産5,000万円と合わせると相続税の基礎控除額4,800万円を2,200万円ほどオーバーしていて相続税がかかります。

 

(退職金3,000万円+預貯金2,000万円+自宅評価額2,000万円-基礎控除額4,800万円=2,200万円・・・相続税の課税総額)

 

A夫さんは「相続税の配偶者控除」を思い出し、相続税が掛からないようにと遺言書に「俺が死んだら妻に全財産を譲る。」と書いたのです。

 

遺言書を書くとまもなくA夫さんは亡くなりました。

 

A夫さんの遺産分割のときに子どもたちは遺言に従って反対もせず(注:子どもたちには遺留分がある。前回のブログを参照。)遺言通りB子さんがA夫さんの遺産全部を相続しました。


2)2次相続で子ども達に思わぬ相続税が掛かってしまった

 

実はB子さんは【自分の親の遺産で既に預貯金1,000万円】を持っていたので、【A夫さんの遺産5,000万円】と合わせると【金融資産は6,000万円】となりました。


A夫さんの相続手続きが終わり数年たったある日、今度はB子さんが亡くなりました。


このとき子どもたち2人は多額の相続税を払わなけばならないことに驚きました。


1.A夫さんが亡くなった時の相続税(1次相続)

 

課税遺産総額 

金融資産5,000万円+自宅2,000千万円-基礎控除額4,800円=2,200万円

 

相続税の総額は、法定相続人が法定相続分を相続したとして算出

 妻B 1,100万円×15%-50万円=115万円 

 子1 550万円×15%-50万円=32.5万円

 子2 550万円×15%-50万円=32.5万円

 

実際に納税する各人の相続税額は

 妻B 相続税の配偶者控除  → ゼロ

 子1 母Bが全財産を相続  → ゼロ

 子2 母Bが全財産を相続  → ゼロ


2. B子さんが亡くなった時の相続税(2次相続)

 

課税遺産総額 


金融資産6,000万円+自宅2,000万円-基礎控除額4,200円=3,800万円


納税額 子1 1,900万円×15%-50万円=235万円


    子2 1,900万円×15%-50万円=235万円


A夫さんが亡くなったとき(1次相続)にはB子さんや子どもたち2人とも相続税額はゼロでした。


しかし、B子さんが亡くなったとき(2次相続)には、子どもたちは470万円もの相続税を払うことになってしまいました。


どうすれば良かったのでしょうか?


一例として、A夫さんが亡くなったときB子さんは自宅2,000万円と金融資産1,000万円を相続し、残りの金融資産4,000万円は子どもたちに半々(2,000万円ずつ)に分けて相続させたとします。


この時の相続税は、以下の通りです。


3.A夫さんが亡くなった時の相続税(1次相続)


課税遺産総額 

金融資産5,000万円+自宅2,000千万円-基礎控除額4,800円=2,200万円


相続税の総額 115万円+32.5万円+32.5万円=180万円 

妻B = 180万円×3/7=77.14万円 → 相続税の配偶者控除より納税額はゼロ

子1 = 180万円×2/7=51.42万円 → 納税

子2 = 180万円×2/7=51.42万円 → 納税


4.B子さんが亡くなった時の相続税(2次相続)


課税遺産総額 

金融資産2,000万円+自宅2,000万円-基礎控除額4,200円=-200万円<0


納税額 子1 ゼロ

   子2 ゼロ


B子さんが亡くなるとき、B子さんの遺産総額は4,000万円であり、基礎控除額内なので子どもたちには相続税が掛かりません。

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