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ファイナンシャルプランナー村川賢

相続対策と相続税対策は違う。あからさまな相続税対策には注意。

先月4月19日最高裁において、タワーマンション購入による相続税対策の事例判決に対して、1審、2審と同様に「国税当局の判断が適正」の判決を下しました。相続税対策として一般的に行われている不動産等による相続税評価額の引き下げ策が、余りにもあからさまな相続税対策とわかる場合は、今後国税当局から認められない可能性があります。


相続対策と相続税対策は違います


まず考えていただきたいのは、相続対策=相続税対策ではないということ。相続対策とは、もちろん相続税対策を含む場合がありますが、もっと広い意味で「笑顔で相続が迎えられるように」「相続人が困ることのないように」もしものときに備えて準備をしておくことです。相続対策の代表的なものに、遺言書やエンディングノートがあります。

遺言書は、決められた書き方で本文を自筆すれば法的効力があり、財産分与等でも自分の意思を反映した分け方ができます。また法務局による「自筆証書遺言書保管制度」(リンクはこちらから)を利用すれば、安価(保管料3900円のみ)に安心して遺言書を遺せます。

もし自筆証書遺言書の作成に不安がある場合は、費用はかかります(数万~10数万円)が公証役場で公正証書遺言書を作成することをお勧めします。

エンディングノートは、法的効力はありませんが、もしもの時に備えて自由に何でも書けます。例えば、自分の配偶者や子への想いと遺産の遺し方などを書いておけば、相続が争族とはならないでしょう。また葬儀社の名前や葬儀に参列して欲しい親戚や友人などの氏名・住所・連絡先などを書いておけば、いざというときに困らないでしょう。


タワーマンションを購入しての相続税対策とは


タワーマンションを購入しての相続税対策とはどんなものか、簡単に説明しておきましょう。

都心にあるタワーマンションの上層階は「億ション」とも呼ばれて、1区分が1億~10数億円ほどするものが多くあります。もちろん富裕層が自分たちで住むために購入する場合が多いでしょうが、相続時の評価額と購入価格(時価)の開きが大きいために相続税対策(賃貸物件などにする)としても購入されています。開きの大きな理由は、不動産の相続税評価額が国税庁の定める「財産評価基本通達」によって評価され、時価と比べると遥かに低い価格(3分の1以下となる場合も多い)になるからです。相続税評価額は、預貯金はそのままの金額、株や投資信託などの有価証券はその時の終値などで評価するため減額できません。それに対して土地であれば、路線価(または倍率方式)で評価するため時価より低くなる上に、「小規模宅地の特例」で配偶者等が引き続き住む土地では最大80%(賃貸物件では最大50%)減額できます。建物については固定資産税評価額で評価しますが、タワーマンションの上層階では固定資産税評価額と購入価格(時価)との差が大きくなります。


最高裁が国税当局の処分を認めた今回の事例


 被相続人(94歳)は他界する3年前に、約8億4千万円と約5億5千万円のマンションを購入しました。被相続人が亡くなり、相続人はそれぞれのマンションを約2億円と約1億4千万円と評価し、さらにマンション購入により約10億円の銀行借り入れ金(負債)があったため、相続税額をゼロとして申告しました。しかし、国税当局はそれぞれのマンションを約7億5千万円と約5億2千万円と時価に近い価格で再評価し、相続人に対して追徴課税約3億円の処分を行いました。


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